ロシア(首都モスクワ、観光地ウラジオストク、サンクトペテルブルク等)への旅行を検討中の皆様へ
本記事では日本国外務省の配信情報をもとに、ロシア(首都モスクワ、観光地ウラジオストク、サンクトペテルブルク等)への旅行・観光時の留意事項をご紹介致します。
1 滞在登録制度
2011年3月25日から,到着通知(ウヴェダムレーニエ ア プリビィチイ:
уведомление о прибытии)の法律が一部変更され,外国人(高度な専門性を有する労働者を除く)がロシアにおいて7労働日以上同じ場所に滞在する場合には,到着後7労働日以内に最寄りの移民局機関に到着通知をしなければなりません。
新たに,高度な専門性を有する労働者として認定を受け労働許可を得ている外国人については,到着から90日以内に到着通知をすればよいことに
なり,通知期限が区別されました。
また,従来どおりホテルに宿泊する場合も,たとえ1泊でも到着通知の義務が課せられます。ホテルに宿泊する場合には,チェックイン後直ちに,ホテル側にパスポートと出入国カードを提出することによりホテルが手続を行います。
ホテルではなくアパート等の個人宅に宿泊する場合には,ロシア国内の居住地(実際に宿泊する場所)または勤務地の住所を通知します。居住地住所で通知する場合は,家主(アパート等賃貸物件の場合)が,また,勤務地住所で通知する場合は,ロシア国内の勤務先の代表者が,それぞれ当該外国人のパスポート,出入国カード等持参の上,郵便局または移民局にて手続を行うことになっています。
退去の場合は,出国記録又は別の場所における新たな到着通知の提出により自動的に抹消されるため,抹消手続は一切不要です。
なお,留学生の場合には,学校が3日以内に手続きを行う必要があります。
*到着通知を巡ってロシア当局とのトラブルが発生しています。トラブルをできるだけ回避するため,(1)到着通知は速やかに行う(ホテルに宿泊する場合は,ホテル側に手続義務があります。),(2)出入国カードを常時旅券と共に携帯する,(3)ホテルをチェックアウトした後も出国時まで出入国カードを所持する等の対応を確実に行うようにしてください。
2 旅行制限
沿海地方には軍事閉鎖都市,軍事立入禁止区域が未だに点在しているので注意が必要です。また,軍の敷地(主に郊外に位置し,鉄条網等で区画されて,標識や黒字の看板に黄色文字でロシア語を記載したものが設置されている場所)内への立入りも禁止されています。
3 各種取締法規
(1)麻薬及び向精神薬については非常に厳しく規制されており,持ち込みが発覚した際には厳罰に処されます。麻薬又は向精神薬の大量不法入手又は保管(販売する意図がない場合)は懲役3年以内,大量不法入手で販売する意図のある保管及び製造,加工,運送,送付,販売に関わった者は3年から10年の懲役,更に財産を没収される場合もあります。なお,「大量」の定義は麻薬取締委員会が定めるもので,乾燥マリファナは2.0グラム以上,ハシシは0.05グラム以上等と定められています。また,それに満たない場合でも,行政法規によって処置対象になります。
なお,知らないうちに麻薬の「運び屋」に仕立て上げられる可能性もないとは言えないので,いかがわしい場所への立入りや現地で声を掛けてくる面識のない人との付き合いには十分注意する必要があります。
(2)外国人は常時パスポートを携帯するよう法律で決められており,警察官等による検査が実施されています。
(3)移民局から外国人を雇用できるライセンスを取得したロシア企業が契約した外国人等を除き,外国人が国内で労働に従事することは許可されません。
(4)外国人による政治活動(デモ参加,署名集め,印刷物の配布等)は厳しく規制されます。
(5)公的に指定された施設以外での賭博行為は違法です。例えば,カジノでの賭博行為は,一部指定される地域では認められていますが,モスクワは指定された地域ではありません。
(6)住居,指定される飲食店以外の広場,駅,路上など公共の場所で飲酒することは禁止されており,違反すれば罰金や拘束の対象となります。
(7)2013年6月30日に「同性愛等の情報流布の制限に関する法律(LGBT法)」が施行され,同性愛等の情報流布や関心を喚起する情報の強制は,罰金や拘束の対象とされています。
4 交通事情
(1)一般的に事故につながりやすいロシアの交通事情は以下のとおりですので,慎重な運転を心掛け
てください。
ア 一般に運転はかなり乱暴で割り込みや反対車線走行,急な車線変更等が日常的に行われている。
イ 歩行者の安全意識が低く,無理な横断や飛び出しなどが多い。
ウ 古い車が多いため故障しがちで,走行中に故障し渋滞を引き起こす。このため後続車両が急に車
線変更を余儀なくされるので危険を伴う。
エ 路上放置車両や駐車車両が通行や視界を妨げ,事故の要因となっている。
オ 道路構造上,車線が急になくなったり,道路に穴が空いていたりして危険個所が多い。
カ 冬季に,路面凍結で滑り易くなっているにもかかわらずノーマルタイヤで走行している車が多い。
キ 冬季は,ヘッドライトの汚れやフロントガラスの曇りで視界が悪くなる。
(2)交通事故防止対策の留意点
上記のような劣悪な交通環境の中で交通事故を起こさないようにするためには,下記の諸点に留意
の上,慎重な運転に心掛けてください。
ア 車で出かけるときはあらかじめ道路(規制状況)や目的地を調査しておき,不慣れな道路はなるべく走らない。
イ 冬季には特にタイヤの交換やウオッシャー液の補充を含む走行前点検を確実に実施し,事故の原因を作らない。
ウ 車線変更,右左折時の信号は早めに行い,バックミラー,サイドミラー等での確認を怠らない。
エ 対向車線寄りの車線の使用は,対向車が追い抜きのため飛び出してくる可能性があるので,十分注意する。
オ 夜間,雨天時等,視界が悪い中での運転は,特に慎重を期す。
カ 冬季は路面が凍結し,滑りやすいので冬季タイヤを使用し,スピードを控え,十分な車間距離を取る。また,郊外の道路は,市内の道路と比べて除雪が間に合わない場所があるで,渋滞情報などを事前に確認する。
キ 特にUターン,左折時は対向車のスピード等を確認し,予測運転はしない。
ク 万一の事故等に備え,保険には必ず加入しておく。(保険に加入せず車を運転している者が多いので,事故に遭った場合,自分で修理費用等を支出することになりかねませんし,高級車との事故では多額のお金を要求されることがあります。)
(3)交通事故を起した場合の対応
自分が原因となって交通事故を起した場合(第一当事者)には次の要領で対処してください。
ア 他の通行車両に注意しながらその場で停車する(事故現場の保存)。
イ 負傷者がいる場合には,直ちに救急車を要請して救護にあたる。
ウ 最寄りの警察署(又は近くの交通警察官)に通報する。
エ 目撃者がいる場合は,氏名,住所,電話番号などを聞いてメモしておく。
オ 時間があれば事故時の状況をメモしておく(ロシア語ができない場合には,知人などに事故の状況をメールで送ってもらい交通警察官に提示することで現場での事情聴取が効率的になります。)。
カ 警察官に免許証,車の登録証を提示して事故調書を作成してもらう。調書の内容が良く分からない場合は,すぐに署名せず,通訳を介して署名することを告げる。
キ 事故後直ちに事故内容を保険会社に連絡する(後日,事故証明書が発行されたら手続を開始することになる。)。
(4)交通事故に巻き込まれた場合の対応
自分が交通事故に巻き込まれたり,事故の被害者になったりした場合(第二当事者)には次の要領で対処してください。
ア 相手の住所,氏名,電話番号とともに車のナンバー,免許証の記載内容をメモしておく。
イ 目撃者がいる場合は,氏名,住所,電話番号等を聞いてメモしておく。
ウ 最寄りの警察署(又は近くの交通警察官)に通報する。
エ 負傷した場合は救護の措置を要請し,病院では診断書と支払の領収書を徴収しておく。
オ 保険会社に連絡する。
(5)各地方における状況
【モスクワ】
モスクワでは,急激な車の増加や道路整備の立ち後れ,路上駐車の常態化等により,慢性的な渋滞が発生しています。道路標示や交通標識はおおむね日本と同じですが,左折が禁止された交差点が多く,また,矢印信号によらなければ交差点の右左折ができない場所もあるため,交通法規を熟知していないと運転しにくい状況となっています。
さらに,各ドライバーの運転は,日本と比べて,安全確認を怠った運転を行う傾向があり,信号無視も多く,運転や横断歩道通行の際には,信号が青でも必ず安全確認を行ってください。シートベルトの不着用や飲酒運転,スピード違反等を犯さず,交通規制を遵守するようにしてください。市内中心部において違法駐車の取り締まりが強化され,駐車が有料に指定されています(ウェブサイトやスマートフォンアプリなどで確認できます。)。
【ウラジオストク】
路面ポットホール及びマンホール箇所の擦り付け部など,凹凸箇所が至るところにあるにも拘わらず補修がほとんど行われておらず,路面は悪い状態となっています。また,道路区画線のない路線が多く走行車線もあいまいであり,運転者の無理な進路変更により多くの交通事故が誘発されているなど,道路の整備状態及び運転者のマナーは劣悪です。朝夕に市内中心部では特に渋滞します。道路横断の際には十分な注意が必要です。また,マンホールの蓋がないところもあり,通行する際には足下にも十分に注意しなければなりません。
【サンクトペテルブルク】
地下鉄・バス・トラム等の公共交通機関は安い料金で利用できる反面,犯罪被害が頻発しているので,犯罪被害に遭うことを想定して十分に注意して利用してください。
タクシーを利用する場合,ホテル受付等から呼ぶものは比較的安全と言えますが,路上を走っているタクシーには無許可のものも多く,値段交渉等においてトラブルが発生し易いので,可能な限り避ける方が賢明です。
道路事情については,近年かなり改善されてきていると言われますが,マンホールに大きな段差がある箇所もまだ多く,信号機の故障もしばしば発生しています。近年の交通量の増加は著しく,市内中心部は特に渋滞します。運転マナーはロシアの中では比較的良好と言われますが,日本と比べると遥かに悪く,ルールを守らないドライバーも数多くいます。同市で運転する際には危険を予測しつつ,ゆとりのあるマナーが必要であると言えます。
【ハバロフスク】
路面には凹凸や大きな段差が多く,道路事情は決して良いとは言えません。運転マナーも総じて悪く,また,坂が多いため下り坂で猛スピードを出す車も多く走っています。
当地では自動車優先の意識が強いことから,交通事故に遭遇する可能性が十分考えられます。道路を横断等する際には周囲の状況を十分に確認するなど,細心の注意が必要です。
【ユジノサハリンスク】
陥没や段差などの補修を要する道路が多く,道路事情は決して良いとは言えません。郊外では,アスファルト舗装がなされていない道路も多くあります。また,ドライバーの運転マナーは決して良いとは言えず,歩行の際には,十分な注意が必要です。
6 森林・泥炭火災
最近4月から9月にかけて森林・泥炭地帯で火災が発生しており,2010年8月には未消火の火災が拡大してモスクワ市内でもスモッグが発生し,住民の健康被害が懸念されました。この火災は,ロシア全土の森林・泥炭地帯で発生しておりますので,森林・泥炭地帯を訪れる際には,前もって火災状況(非常事態省(http://www.mchs.gov.ru )ウェブサイトなど)を確認してから外出することをお勧めします。
7 ハーグ条約
ロシアは,国境を越えて不法に連れ去られた子の返還の仕組み等を定める「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」の締約国です。一方の親の監護権を侵害する形で子どもを常居所地国であるハーグ条約締約国から他のハーグ条約締約国へ連れ去り又は留置した場合は,原則的に子が常居所地国に返還されることとなります。
8 長期滞在者向けの注意事項(在留届)
現地に3か月以上滞在される方は,緊急時の連絡などに必要ですので,到着後遅滞なく最寄りの日本国大使館又は各日本国総領事館に「在留届」を提出してください。また,住所その他届出事項に変更が生じたとき,又は日本への帰国や他国に転居する(一時的な旅行を除く)際には,必ずその旨を届け出てください。在留届の届出は,在留届電子届出システム(ORRネット,https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet )による登録をお勧めしますが,郵送,ファックスによっても行うことができますので,最寄りの在外公館まで送付してください。
出典:外務省 海外安全ホームページ(http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymeasure.asp?id=178)