【ポイント】
●インド保健家族福祉省は、5月15日、同国グジャラート州アーメダバード市ブプナガール地区において、3例のジカウイルス感染症例が報告されたことを発表しました。これを受け、世界保健機関(WHO)は、インドを新たに「カテゴリー2:2015年以前にウイルス伝播が確認又は2015年以降新たに感染事例が報告され、中断なく感染伝播が起きている地域」に追加し、妊娠中の女性に対して同国への渡航を控えるよう呼びかけています(以下1.(2)参照)。
●ジカウイルス感染症は、妊娠中の方が感染すると胎児に小頭症等の先天性障害を引き起こす可能性があることから、特に妊娠中又は妊娠予定の方は、可能な限り発生地域への渡航をお控えください。やむを得ず渡航する場合、既に現地に滞在している場合は、防蚊対策に努めるとともに、性行為感染のリスクも考慮し、パートナーとともに、症状の有無にかかわらず、コンドームを使用する、性行為を控えるなど、必要な対策を講じることをおすすめします。

 

 
1.インドにおけるジカウイルス感染症例の発生
(1)インド保健家族福祉省は、2017年5月15日、同国グジャラート州アーメダバード市ブプナガール地区において、3例のジカウイルス感染症例が報告されたことを発表しました。
(2)世界保健機関(WHO)は、ジカウイルス感染症の伝播状況及びその潜在性に応じて以下の4つのカテゴリーに分類して注意喚起を行っており、妊娠中の女性に対して、カテゴリー1及び2に含まれる地域には渡航しないよう呼びかけています。インドでの感染例の報告を受け、5月24日、同国を「カテゴリー2:2015年以前にウイルス伝播が確認又は2015年以降新たに感染事例が報告され、中断なく感染伝播が起きている地域」に追加しました。

○カテゴリー1:2015年以降初めて又は再び感染事例が報告され、現在も感染伝播が起きている地域
【アフリカ地域】
アンゴラ、カーボベルデ、ギニアビサウ
【中南米地域】
アルゼンチン、アンティグア・バーブーダ、エクアドル、エルサルバドル、ガイアナ、グアテマラ、グレナダ、キューバ、コスタリカ、コロンビア、ジャマイカ、スリナム、セントルシア、セントクリストファー・ネーヴィス、セントビンセントグレナディーン諸島、ドミニカ共和国、ドミニカ、トリニダード・トバゴ、ニカラグア、パナマ、バハマ、パラグアイ、バルバドス、ベネズエラ、ベリーズ、ペルー、ボリビア、ホンジュラス、メキシコ、英領(アンギラ、タークス・カイコス諸島、ケイマン諸島、バージン諸島、モントセラト)、フランス領(グアドループ、サン・マルタン、ギアナ、マルティニーク)、オランダ領(アルバ、ボネール、キュラソー、シント・マールテン、シント・ユースタティウス島及びサバ島)、米領(バージン諸島及びプエルトリコ)
【北米地域】
米国フロリダ州の一部地域、米国テキサス州の一部地域
【アジア地域】
シンガポール、モルディブ
【大洋州地域】
サモア、ソロモン、トンガ、パラオ、パプアニューギニア、フィジー、マーシャル、ミクロネシア、

○カテゴリー2:2015年以前にウイルス伝播が確認又は2015年以降新たに感染事例が報告され、中断なく感染伝播が起きている地域
【アフリカ地域】
ウガンダ、ガボン、カメルーン、コートジボワール、セネガル、中央アフリカ、ナイジェリア、ブルキナファソ、ブルンジ
【中南米地域】
ハイチ、ブラジル
【アジア地域】
インド、インドネシア、カンボジア、タイ、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、ラオス

○カテゴリー3:感染伝播は途絶えているが、将来感染伝播が起こる可能性がある地域
【中南米地域】
フランス領サン・バルテルミー島
【大洋州地域】
バヌアツ、チリ領イースター島,クック諸島、仏領ポリネシア、仏領ニューカレドニア、米領サモア

○カテゴリー4:ネッタイシマカの生息が確認されているが、これまでに感染事例の報告がない地域
【アフリカ地域】
エジプト、エリトリア、エチオピア、ガーナ、ガンビア、ギニア、ケニア、コモロ、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、サントメ・プリンシペ、ザンビア、シエラレオネ、ジブチ、ジンバブエ、スーダン、赤道ギニア、セーシェル、ソマリア、タンザニア、チャド、トーゴ、ナミビア、ニジェール、ベナン、ボツワナ、モザンビーク、マダガスカル、マラウイ、マリ、南アフリカ、南スーダン、モーリシャス、リベリア、ルワンダ、仏領マヨット、仏領レユニオン、
【中南米地域】
ウルグアイ
【中東地域】
イエメン、オマーン、サウジアラビア
【ヨーロッパ地域】
ジョージア、トルコ、ロシア、ポルトガル領マディラ
【アジア地域】
スリランカ、中国、ネパール、パキスタン、東ティモール、ブータン、ブルネイ、ミャンマー
【大洋州】
オーストラリア、キリバス、クリスマス諸島、ツバル、ナウル、ニウエ、ニュージーランド領トケラウ、米領(グアム、北マリアナ諸島)、仏領ウォリス・フツナ

 
2.ジカウイルス感染症について
(1)感染経路
 ジカウイルスを持ったネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されることで感染します。感染した人を蚊が刺すと、蚊の体内でウイルスが増殖し、その蚊に他の人が刺されると感染する可能性があります。また、母胎から胎児への感染(母子感染)、輸血や性交渉による感染リスクも指摘されています。こうしたリスクを考慮し、流行地域に滞在中は、症状の有無にかかわらず、性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えるようご注意ください。また、流行地域から帰国した男女は、症状の有無にかかわらず、最低6か月間、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えるようにしてください。なお、性行為による感染は、男性から女性パートナーのみならず、女性から男性パートナーへの感染例も報告されています。
(2)症状
 ジカウイルスに感染してから発症するまでの期間(潜伏期間)は2~12日であり、主に2~7日で、およそ2割の人に発症すると言われています。発症すると軽度の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、斑丘疹、疲労感、倦怠感などを呈しますが、一般的にデング熱やチクングニア熱より軽症と言われています。
(3)治療方法
 現在、ジカウイルス感染症には有効なワクチンや特異的な治療法はなく、対症療法が行われます。ジカウイルス感染症が流行している地域で蚊に刺された後に発熱が続く、または発疹が出るなど、ジカウイルス感染症を疑う症状が現れた場合には、医療機関への受診をお勧めします。
(4)予防
 ジカウイルス感染症には有効なワクチンもなく、蚊に刺されないようにすることが最善の予防方法です。これらの感染症の発生地域に旅行を予定されている方は、次の点に十分注意の上、感染予防に努めてください。また、症状の有無にかかわらず、帰国後少なくとも2週間程度は忌避剤を使用し、蚊に刺されないための対策を行ってください。
●外出する際には長袖シャツ・長ズボンなどの着用により肌の露出を少なくし、肌の露出した部分や衣服に昆虫忌避剤(虫除けスプレー等)を2~3時間おきに塗布する。昆虫忌避剤は、ディート(DEET)やイカリジン等の有効成分のうちの1つを含むものを、商品毎の用法・用量や使用上の注意を守って適切に使用する。一般的に、有効成分の濃度が高いほど、蚊の吸血に対する効果が長く持続すると言われている。
●室内においても、電気蚊取り器、蚊取り線香や殺虫剤、蚊帳(かや)等を効果的に使用する。
●規則正しい生活と十分な睡眠、栄養をとることで抵抗力をつける。
●軽度の発熱や頭痛、関節痛や結膜炎、発疹等が現れた場合には、ジカウイルス感染症を疑って、直ちに専門医師の診断を受ける。
●蚊の繁殖を防ぐために、タイヤ、バケツ、おもちゃ、ペットの餌皿等を屋外放置しない、植木の水受け等には砂を入れるなどの対策をとる。

 
3.発生地域からの帰国時・帰国後の対応(日本国内の検疫について)
 蚊に刺され心配な方や発熱等の症状のある方は、帰国された際に、空港の検疫所でご相談ください。
 また、帰国後に心配なことがある場合は、最寄りの保健所等にご相談ください。なお、発熱などの症状がある場合には、医療機関を受診してください。

 
出典:外務省海外旅行登録「たびレジ」提供情報を加工して作成

 

 

投稿者について

本ブログは海外治安情報を中心に配信しております。

おすすめ: