犯罪やテロから身を守ることは大切ですが,キャンベラを中心とする首都特別地域(ACT)内外の自然の中には,人の生命を脅かす,日本にはない独特な生き物や植物が存在します。以下はその一例ですが,興味本位で触ったり近づいたりすることのないようにすることが大切です。
蛇:ブラウンスネーク,アカハラクロヘビ
ブラウンスネークはネズミ等を常食とすることから草地や家の裏庭など人の身近な場所に現れ,排水溝などに忍び込み詰まりの原因になることがあります。裸足でいると足を噛まれることもあり,ズボンや靴を履いて防止します。アカハラクロヘビは小川や河原にいるので,アウトドアなど外で発見することがあります。もし噛まれた場合は,毒が体に回り内臓や全身が麻痺するなど致命的な症状を防ぐため,動かさずなるべく安静にし,受傷箇所より心臓寄りの部分をバンドで固定して救急車等で病院に急行します。
蜘蛛:セアカゴケグモ
オスは体長3~5ミリ(脚は含まない),メスは体長1~2センチの小さな蜘蛛で,雨に濡れるのを嫌い,バーベキュースタンドや植木鉢,公園の遊具の裏側に巣を作ります。見えないところにいるため,うっかりと指を伸ばして刺されたり,靴の中にいるのに気付かず足を入れて刺されるケースがあります。メスが毒を持っており,もし刺された場合は,激しい痛みと腫れ,発汗・発熱の症状があるので,医療機関を受診した方が良いでしょう。
蟻:キバハリアリ
体長は8ミリから大きいものは4センチにもなる蟻で,草地の土の中や木や岩石の下に巣を作ります。大きなアゴを持ち,アゴで相手を挟んで蜂のようにおしりの毒針で刺します。毒針は蜂のように刺した後に相手の体内に残ることはなく,何度でも刺すことができ,刺されるとかなりの激痛があります。巣を壊したり踏みつけたりすると,攻撃的になり集団で襲いかかってくるため,あまり巣には近づかないようにするなど注意が必要です。
鮫:ホオジロザメ
オーストラリアでは鮫による死傷といった被害が多く報告されており,1958年から2016年にかけては536件,そのうち72件が致命的 な被害となっています。世界では毎年100件以上の被害が発生していますが,その半分ほどはホホジロザメによるものです。海水浴やマリンスポーツを行う際は,監視員がいる整備された海水浴場を選び,旗と旗の間を泳ぐようにした方が無難です。海の中では,派手な水着を避け,集団で行動した方が狙われにくく,もし近くに鮫を発見した場合は,鮫を刺激せず,他に注意をそらすため,しぶきを立てずに静かに行動した方が良いでしょう。
鳥:マグパイ,ツチスドリ
10~12月の春になると,白黒色のカラスに似たマグパイという鳥が繁殖期を迎え,自転車に乗る人やランニングを楽しむ人に襲いかかる(swoop)ことがあります。全てのマグパイが人に襲いかかるわけではありませんが,巣やひな鳥を守るための本能的な行動と見られています。クチバシで正面から襲われて目を失明するといった被害も出ているため,自転車に乗る際は,ヘルメットとゴーグルを着用した方が良いでしょう。襲われそうになった際は,自転車から降りる,走らずに歩く,鳥の方を見ながら遠ざかるといった方法で,被害を防止できます。ツチスドリはマグパイに似た小型の鳥で,繁殖期においては巣の近くで行動する人を襲うことがあるため,歩いている人も鳥に襲われて怪我をしないよう注意する必要があります。
毒キノコ:タマゴテングダケ
2~4月の夏から秋になると,公園や庭先など至るところでキノコが生えているのを見かけます。ACTでは,毒キノコで死亡する事案が過去16年間で4件発生しており,野生のキノコに触らないよう呼びかけています。毒キノコを摂取する事案の9割以上がタマゴテングダケ によるものと言われています。タマゴテングダケは,ブナやコナラなど落葉樹の近くに生えることが多く,傘がオリーブ色か時折,薄茶色,裏側のひだは白色,柄(え)は白色でつばがあり,かすかなアンモニア臭がします。強い毒性を持ち,料理によっても毒性は排除できず,食後24時間程度で腹痛やめまい,吐き気,下痢などを引き起こし,その後,肝臓不全から死に至ります。タマゴテングダケ1本が致死量の毒を持つと言われており,見分けが困難なため,野生キノコには近づかず採取しないなどの注意が必要です。
出典:外務省ホームページ(http://www.au.emb-japan.go.jp/files/000228475.pdf)